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地域医療構想に関わる特別委員会県外行政視察

9月8日
読了時間: 5分

更新日:7 日前

 地域医療構想に関わる特別委員会の行政視察(令和8年9月7日~8日)に岐阜県土岐市及び愛知県豊橋市を訪問し、地域医療構想に関わることをテーマとして、下記の通り行政視察を行いました。

①公立東濃中部医療センター

(1)統合の背景と「公設民営方式」という選択

 岐阜県東濃地域においても、他地域と同様に少子高齢化の急進、医師不足、さらには病床の過剰感と回復期機能の不足といった深刻な課題を抱えていました。こうした状況を打破するため、土岐市立総合病院(350床)と東濃厚生病院(270床)という地域の中核病院同士が統合を決断しました。

 両市の中間というアクセスのバランスを考慮した地に、令和8年2月に新たに開院した同センターは、地域医療の拠点として充実したハードウェアを備えています。

 建物・構造: 免震構造を採用した地上7階建て、総病床数400床(一般296床、回復期リハ44床、地域包括ケア40床、緩和ケア20床)、計36診療科を有する大規模な体制となっています。当初見積りの段階では約200億円と試算されていましたが、近年の資材価格の高騰・物価上昇に加え、高度な医療機能や安全性を確保するための様々な要望を反映させた結果、最終的な総事業費は349億円(病院事業債や各種補助金を活用)となりました。近年の社会情勢の変化が医療インフラの整備コストに与える影響の大きさを物語る事例と言えます。

(2)開院後の医療実績と最先端医療の導入

  統合・再編の効果は、すでに具体的な数値や体制となって表れています。

 診療・救急の実績: 入院・手術件数や救急搬送の受け入れ数が順調に増加しており、地域の命を守るセーフティネットとしての機能が一段と強化されています。

 医師体制の充実については、常勤医師数が従来の65名から79名へと増加し、診療体制の厚みが増しています。

 先端医療機器の導入は、循環器内科におけるカテーテル治療や、産婦人科における分娩体制の維持・強化に加え、高精度な放射線治療システム「バリアンEdge」、高周波式がん温熱治療装置「ハイパーサーミア アスクーフ8」、さらには手術支援ロボット「ダヴィンチ」などの最先端医療機器が導入され、質の高いがん治療や外科治療を提供できる環境が整えられています。

(3)運営における今後の課題

 今回の視察を通じて、2つの病院を1つに統合するという大規模再編には、異なる組織文化の融合、莫大な事業費の調整、さらには交通アクセスや地域住民との調整など、想像を絶する困難とハードルが伴うことを深く認識させられました。

 他方で、物理的な「一病院化」のハードルが総じて高い香川県の現状に目を向けたとき、今回の東濃の先進的な統合事例から学べるエッセンスを取り入れつつ、今後は「機能ごとの役割分担(機能分化)」を徹底すること、そしてICTやDXを最大限に活用した「ネットワーク型の連携」を地域全体でいかに構築していくかが極めて現実的かつ不可欠なアプローチであると強く確信しました。

 充実したハード面と実績の一方で、持続可能な病院運営に向けた現場の課題も率直に共有していただきました。人材の確保: 看護師の不足や、一部診療科における依然としての医師の少なさは、全国共通の課題として重くのしかかっています。

 患者のアクセス問題も課題の一つでもあり、広域からの統合再編にともない、公共交通機関の減便や高齢化が進む中での「通院手段の確保」が課題となっており、医療の質を高めることと患者がたどり着ける交通網をどう維持するかという、医療計画以外のインフラ課題も浮き彫りとなっています。



② 社会医療法人明陽会「成田記念陽子線センター」

 東海地方の民間医療機関として初めて陽子線治療を導入された、愛知県豊橋市の「成田記念陽子線センター」を訪れました。豊橋駅西口から徒歩約3分というアクセスの良い都市型立地にあり、地域医療における先端医療の展開と、患者のQOL(生活の質)向上に向けた取り組みについて説明を受け、施設内を視察しました。

(1)施設の概要と最先端の導入設備

本センターでは、ベルギー・IBA社の陽子線治療装置「Proteus ONE」を国内の民間医療機関で初めて導入しています。

通常、陽子線治療施設には大規模な専用棟が必要となりますが、本装置は加速器や治療室、操作室、遮蔽壁などをテニスコート約1面分の敷地に収めるコンパクトな省スペース設計を実現しており、敷地面積が限られる都市部の医療機関への設置を可能にしています。また、将来的な機器の更新時にも建物を取り壊すことなく入れ替えが行える合理的な構造となっています。

(2)陽子線治療の医学的特長と治療効果

 陽子線治療の最大の特長は、放射線が持つ物理特性である「ブラッグピーク」にあります。X線は身体を通り抜ける過程で表面から裏側まで被曝を伴いますが、陽子線は設定した体内の深さ(腫瘍の位置)でエネルギーを最大限に放出してピタッと停止するため、腫瘍の背後にある正常組織への照射をゼロに抑えることができます。

さらに、同等の放射線量であってもX線に比べて生物学的効果が約10%高く、酸素が乏しい難治性の腫瘍に対しても効果を発揮しやすいという利点があります。また、近年のスキャン技術の向上により、複雑な形状の腫瘍にもピンポイントで照射することが可能となっています。

(3)治療実績と患者の負担軽減(日常生活との両立)

 2018年度の治療開始から2025年度までに延べ1,222名の患者の治療を行っており、着実に実績を重ねています。普段の生活を送りながらの通院ができるのが特徴で、1回の治療は10分程度で終わります。前立腺がんの治療は8日間は受けなければなりませんが、入院の必要性が低いため、仕事や普段の生活を続けながら治療を受ける患者さんも多くいらっしゃいます。

 疾患別では前立腺がんが最も多く、次いで膵臓がん、肝臓がん・胆管がんなどが続いています。前立腺がんの治療においては照射回数の短縮化(現在は8回等)が進められており、1回あたりの治療時間が短く、副作用(尿漏れや男性機能の喪失など)を大幅に抑えられることから、入院の必要性が低く、仕事や日常生活を続けながら通院治療を行うことが可能です。

 最先端の医療技術による高い治療効果と、患者の身体的・精神的負担を最小限に抑える療養環境の両立に深く感銘を受けました。地方における高度医療のあり方や、地域完結型の医療体制を考える上で、大変示唆に富む有意義な視察となりました。

お世話になりましたセンター長をはじめとする関係者の皆様、誠にありがとうございました。

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